分からないけど、面白い。

コンテンポラリーダンスを見るひと初心者のブログ

難しくてよく分からない。分からないけど、なんか面白い。コンテンポラリーダンス!

2015/10/05 バットシェバ舞踊団「DECADANCE」 @神奈川県民ホール 大ホール

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強靭な肉体、ダンサー1人ひとりが放つ圧倒的な存在感!ダンスの魅力の全てが詰まった、最高の舞台でした!!思い出すだけで興奮してくる、踊れないのに踊りだしたくなる。やっぱり見に行って良かった、バットシェバ舞踊団。興奮して長々と書いてしまい、あまりにもとりとめなく推敲も足りないけれど、とりあえずこの興奮を書き留めておきたい。

見に行くと決めたわけ

そもそも、初めて覚えたコンテンポラリーダンスのカンパニーの名前がバットシェバ舞踊団だったんです。まだコンテンポラリーダンスに親しみがないころ、友達に誘われて乗越たかおさんの講座に参加したことがありました(それで彼のことは前から知ってた)。その日に覚えて帰った名前はたったのひとつだけ。それが、バットシェバ舞踊団でした。ムービー見て「すげー!!この動き変態!!!」って、強烈なインパクトだった。

どうしても生で見てみたくて、彩の国さいたま芸術劇場に「Sadeh21」を見に行ったのが3年前。まともな感想メモも残っておらず記憶は時間とともに薄れ、衝撃だけが脳内に残っていつの間にかもう3年。こんなにコンテンポラリーダンスにハマるなんて、まったく想像もしていなかった当時、それでも次回に来日することがあったらまた絶対見ようと決めていました。待望の来日公演です!!

熱いぜバットシェバ舞踊団!!

席は、ダンサーの身体も舞台全体も一応見える8列目のはし。座ってふと気が付くと、舞台上に男性ダンサーが1人いて、ソロを踊り始めていました。明るいラテンミュージックで、リラックス&ウェルカムムード。開演時刻前から楽しい!!身体の支点はどこにあるのか、あの関節はどこまで伸びるのか、というかあれは人間の動きなのか!?これから始まる作品と、ダンサーたちへの期待が高まります。

時間が来ると、徐々にダンサーが加わり、それぞれにリズムをとりながら人数が増えていきます。振り付けが全員そろった瞬間、グイッと世界に引き込まれる!!とても素敵なオープニングでした!幕がおり、期待感は最高潮!!

今回は過去9作品のオムニバスとのことで、全部書くときりがないし詳細は記憶もあやふやなので、印象に残った部分だけかいつまんで。順番は実際と違うかも。

最初の椅子を使った作品は、とても有名な作品だそう。すごい迫力でした。全員が順に椅子から立ち上がるが、右端の1人だけが毎回跳ね落ちてしまう。すごい圧力の合唱の中、右端の1人はよろよろと立ち上がる。全員が順に踊るのだが、振り付けが進んでもその1人だけは服も脱がず、投げるふりだけ。抑圧されているようでも、何かに立ち向かうようでもあり、力強さも感じました。切実な表現。あまり詳しく知らないけれど、イスラエルという国の歴史や、イスラエルの社会の抱えるものが伝わってくる気がしました。

Twitterを見ていたら、この演目で使われている「Echad Mi Yodea」という音楽を紹介している方がいました。少し調べてみたところ、ユダヤ教過越の祭り(ペサハ)で歌われる歌とのこと。とても宗教的で、想像するにかなりメジャーな歌なのでしょうね。英語のWikipediaGoogle翻訳に貼っつけたものを読んだだけなのでよくは分からないのですが、子どもの歌う数え歌のようでもあるみたいです。こちらの動画で歌詞が英訳されています。


Echad Mi Yodea lyrics and translation אחד מי יודע - YouTube

ちょっと話が脇道に行ったけど、とにかくダンスの迫力がすごくて、圧倒されました!!! あふれるパワー。

あ、このペースだといつまでも終わらなさそう。。

舞台の前側に列を作って1人ずつ踊る、野性的な、どこか儀式のような作品も良かった。並んでいるダンサーがかわるがわるソロダンスを披露していくのだが、最後の止めのところだけ全員が動きをそろえる。こういう快感が、ダンスの醍醐味の一つだよなぁ!と思ったり。両腕を激しく振る動きも野性的で良かったけど、上半身を少しだけくいっとするような、さりげないフリで全員揃えているのがすごく面白かった。

男女のデュオ(あやふやですがたしか)では、人間って、男女って、どういう存在なんだろうなどと考えてみたり。

黒のスーツに帽子をかぶった衣装で大勢が登場すると、ガッツリ高速のカッコよすぎる振り付け!!激しすぎて帽子が飛んで、慌ててかぶり直すダンサーも笑。

観客がステージに上げられるシーンは、すごく楽しかった。あまりにもSadeh21のイメージが強かったので、観客を引き込むエンターテイメントな雰囲気に少し驚いたけれど、各所で上演されているとても有名な作品なんですね。

舞台に上がった方の中にはおそらく普段からダンスをしている方も何人もいらっしゃいましたが、そうでない方もとても魅力的!きっとエスコートが素晴らしいんですね。観客自ら思いついた手のひらの動きをダンサーが真似するなど、ペアになった観客とダンサーのコミュニケーションが温かく伝わってきて、本当に幸せ気分。そうだよ、ダンスって誰でも楽しめるし、楽しく身体を動かせばそれが踊りなんだよ。ダンスのもつ一番ピュアな魅力が、劇場全体に充満するようでした。最後に1人残された年配の女性が、とても素敵だった笑。

3年前に見たSadeh21。どんな舞台だったか、なんとなくの印象しか残っていなかったのだけれど、肩に女性をのせた男性ダンサーが歩いてくると、鮮やかに記憶が蘇りました。本当に美しい作品だった。劇場という限られた空間の中に、無限の地平が広がる。人の身体の表現の可能性ってすごい。目の前のステージを見ながら、その時の感動が再びやってきて、全身を震わせてくれました。他の作品も、過去に見たことのある人は今日は最高だっただろうな。

男性1人、女性2人の3人で踊るシーンは、とにかくそれぞれの身体に釘付け。伸びやかで強靭な身体は、一瞬、その日々の鍛錬のことすら忘れてしまうほど、自然。不思議なんだけれど。この自然さは、私がこれまで見た他のダンスにはなかった魅力かもしれません。彼らは、生きるように踊っているのだろうか。

男性がかがんで両腕を前に出し、女性にむかって突き出して少しずつ進み、女性を突き飛ばしてはまた戻ってくるシーンには、何か共感できる物語を感じました。男性/女性に分かれてのコンパクトな群舞も、不思議と個性が見えてとてもおもしろかったです。

個人的に一番ぞくぞくきたのが、数を数えながら動きを増やしていくシーン!数字の聞き取りには自信がないですが、パンフレットを読むとギリシャ語?のようです。

ウーノ

ウーノ、ドゥオ

ウーノ、ドゥオ、テーラ

ウーノ、ドゥオ、テーラ…ネフタ、デカ

と10まで数え、その数字に合わせてフリが1つずつ増えていきます。とにかくカッコイイ!説明はできないけど、なぜか、これぞダンスって感じがありました。ちなみにタイトルのDECADANCEはDeca Dance、10周年の「10(デカ)」とダンスを合わせた語とのこと。このシーンでは、10の動きで構成されたダンスが次々と繰り広げられていきます。

※末尾に入れた動画「Deca Dance」の、54分過ぎたぐらいのところから。

他は知らないですが、ストリートダンスの練習ではこの振付のように、前からワンエイトぐらいずつ追加してフリを入れていくことが多いんですよね。1つずつ追加していくのはすごく基礎的なやり方という個人的な感覚があって。そんな私個人の体験と、ステージ上のパフォーマンスが同じ地平のもとにつながっているという気がして、そこでも少しぞくぞくきました。いや、とはいっても果てしなく遠くではあるんですが笑。

でも、身体を動かすことやその喜びは、プロダンサーじゃなくても共有できるもの。それもダンスの素晴らしさだと思います。

全員が満面の笑みでピッピッと腕を動かしているシーンは、面白かったけどなんか怖かった笑。

終盤の、3列になり一人ひとり踊るところ。色々なことを感じたけれど、今の彼らの、未来に向かうダンスなのかなと思いました。ダンスとは、これだ!というメッセージのように思えた。お腹や手のひらを見せる様子も印象的でした。人種や国を超えるダンスの力がある、そんなメッセージを(勝手に)受け取りました。

力強く、ハンパない熱量のパフォーマンス。最後まで集中を切らさず、本当に楽しく見ることができました。

驚愕すべき肉体。迫力。力強さ。
切実さ。社会とのかかわり。
野生。儀式。快感。
スピーディーでエネルギッシュな身体。
楽しさ。エンターテイメント。
一体感。幸福感。祝祭性。
美しさ。伸びやかで強靭な身体。
物語。共感。トランス。喜び。
生きること、人間とはなにか、という
普遍的な問い。

自分の感想からキーワードを拾い出してみただけでも、こんなにたくさんの「ダンスの魅力」が、このDECADANCEには詰まっていました!!!贅沢過ぎるぜ、DECADANCE!!!!!

全てを支えているのが、ダンサーたちのしなやかで強靭な肉体。強さもそうだけど、止めが自然なのがすごく美しかった。ストリートダンスだとガツッと止める感じだけど、そうじゃなくて自然な止め。でも、それがすごくカッコイイ。

ちなみにストリートダンスとの関連は乗越さんもつぶやいてたのがちょっとビックリした。(そして彼のそういうところが好き)

本当、ストリートダンスの人たちもこういう舞台を見に来たらいいと思う。世界が変わるよ!私は少なくともそうだった(今はもう踊る人じゃないけど)。

おわりに

過去作品を抜粋しながら、カンパニーのエッセンスを詰め込んだひとつの作品。人はなぜ踊るのか。踊りとは何か。これが答えだ!!みたいな、素晴らしいステージでした。

ただ、やっぱりオムニバス作品なので、「1本の作品をフルで見たい!」という欲求は強まるばかり。いろんな美味しいものを少しずつ味見だけしたら、すごくお腹が減ったみたいな感じです。全体のストーリーを感じる作品をまるまる1本見たい、という欲求不満を残しつつも、こんな宝石箱のようなスペシャル公演を見られただけで大満足です。(これが6000円ですよ!?)

公演の後、分かりやすいフリを真似して踊っちゃいました。天と地ほども違う、超劣化版だけど笑。踊りたくなるダンス、それこそが素晴らしい踊り!!

覚書:バットシェバ舞踊団

HP http://batsheva.co.il/en/home

今回とは別の公演ですが、DECADANCE、Youtubeにまるまる上がっていました!うおお〜。


Ohad Naharin Deca Dance - YouTube